傷恋(キズコイ)
ギュッと目を閉じ、動かない私に先生の唇が移動していく。

その度に微かな刺激を伴って。

「止め…てッ」

「君も神崎さんと同じ事を言うんですね。神崎さんはわかりますが…君はどうしてです?僕を好きだと思ってましたが?」

「好きだから…何をされてもいいって訳じゃない…!」

「そういうものですか」

唇を離した先生は興味深そうに私を眺めるけど、それは研究対象を見るように冷静だ。

「女心はわかりませんね」

先生に触れられた首筋に手を当てて立ち尽くす私をその冷たい視線で刺す。

「…どうして…あんな事…?」

「前に言いましたよね?榊くんと知り合いだって」

小さく頷く私に満足そうに微笑む。

「僕は榊くんが嫌いでね。神崎さんには悪いですが、彼を傷つけたかったんですよ」

「そんな理由で…!?」

「君に僕の気持ちなんてわかりませんよ」

私の言葉が不愉快だったのか少し眉間に皺を寄せた。

先生と征也さんに何があったかなんて知らない。
だけど…。

「結衣を傷つける理由にはならないよ。どうして征也さんに直接言わないの?」

私は先生の中の触れてはいけないところに触れたらしい。
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