傷恋(キズコイ)
「友達思いで結構ですね。今頃どうなってるやら」

愉しげな口調に思わず先生を睨んだ。

「ところで柏木さん。昨日、神崎さんに部屋を荒らされてしまいましてね。片付けを手伝ってもらえませんか?」

私の視線を気にする様子もなく頼み事をする。

私に拒否権はない。
だから頷いた。

「わかりました」

「では、早速お願いしても?」

私は席を立つと先生の後ろを付いて歩いた。






先生の部屋はそれは見事な有様だった。

本や資料の束が雪崩のごとく崩れていて、通り道の分だけ横に寄せられている。

結衣の暴れっぷりは相当なものだったらしい。

何となく結衣っぽくて、こんな時なのに口元に笑みが浮かんだ。

「では、お願いしますね」

先生の声で我に返った私は黙々と部屋の片付けに取りかかった。
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