傷恋(キズコイ)
ふう……。
暑いなぁ…。

もうすぐ夏だもんね。

薄らと額に浮かんだ汗を手の甲で拭ってると、首に冷たいものが押しあてられて飛び上がる。

「ひゃッ!?」

慌てて振り返ると、先生が缶ジュースを持って立っていた。

「ご苦労様。少し休憩しましょうか?」

「はい」

先生に促されるまま、この部屋で唯一の二人掛けのソファーに座った。

目の前のテーブルにも本が所狭しと置かれている。

缶ジュースに口をつけながら先生に進言した。

「今ならインターネットで研究資料は揃うんじゃないですか?この本の山を減らすためにも、もっと活用したら?」

「もちろんインターネットも使ってますよ。ただ基本的に本が好きなだけです」

「限度ってものがあるでしょう」

「そのために君に頼んでるんじゃないですか。それより…」

私の手の中にあった缶ジュースが先生に取り上げられる。

「飲ませてあげましょうか?」

「え?」

先生の顔と缶ジュースを交互に見る私に構わずジュースをあおった先生は、私を抱き寄せ唇を押しあてた。

流れ込むジュースを零さないように反射的に唇を開くと、甘い液体が喉を通過する。
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