傷恋(キズコイ)
「先…生…?」

「君が欲しい…と言ったらどうしますか?」

間近で見る先生の目はすごく冷めてて、とても本心からの言葉だなんて思えない。

本当に私の事、何とも想ってないんだな…。

「……拒否権はないんでしょう?」

「そうですね。訊いてみただけです」

先生は私を傷つけたいんだろう。

想い人が何の感情もなく自分を抱く。

そこにあるのは単なる欲求の解消で。

このままだと先生は周りを全て傷つける。
自分が犠牲になれば…なんて思ってる訳じゃない。

ただ単純に私は先生が好きで、その人が望むなら自分さえも差し出す。


無言で目を見つめる私に先生が手を伸ばした。

「やっぱり不思議な人ですね」

これから起こる事に、不安と微かな希望を抱いて私は目を閉じた。
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