傷恋(キズコイ)
先生の闇は何て深いんだろう。

私が先生を救えるなんて自惚れてた訳じゃない。

でも、もしかして。
ほんの少しだけでも先生の支えになれるんじゃないかって思ってた。

それもあっさり玉砕しちゃって、先生は私に触れる事すら放棄した。



「私じゃ無理なんだなぁ…」

涙と一緒に愚痴が零れる。

結衣にも先生にも合わせる顔がないや。

想っても届かないもどかしさと、役立たずな自分が腑甲斐なくて仕方ない。

ただ大事な人のために何かしたいだけなのに。
それすらも叶わない自分が悔しい。

人から羨ましがられる外見だって、今こんな時に何の役にも立たない。

せめて先生が外見だけでも気に入ってくれればいいのに…。

そう考えて、そのバカバカしさに気づいた。

先生が外見に惑わされない人だったから私は惹かれたんでしょ。
穏やかで知的な雰囲気は憧れるに十分だった。
憧れが恋心に変わったのはいつ頃だったんだろう。

自分の事なのにわからないけど『恋するぞ!』と思って好きになる訳じゃない。

いつの間にか私の中が先生で一杯になって、とても大事な人になっていただけ…。
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