傷恋(キズコイ)
「僕は…卑怯な臆病者です。君にそんな風に言ってもらえる価値もありません」

それは本心から言ってるんだろう。

でも……。

「価値があるかどうかは私が決める」

身体を先生の方に乗り出すと、唇の切れていない側にキスをした。




「……今…君を好きになったかもしれません…」

「本当!?」

思ってもいなかった先生の言葉に勢い込む私を片手で制する。

「君のような強くて頑固者を傍に置いてると、僕も今よりは強くなれそうな気がします」

頑固者って…。
褒められてんだか、けなされてんだかわかんない。

「1つお願いがあるんですが」

頷く私から僅かに視線を外し話し出す。

「こんな有様で、僕は当分人前に出れません。治るまでとは言いませんが…マシになるまで傍にいてもらえますか?」

「……治っても傍にいていいなら…引き受けるよ」

先生は大きなため息を吐き出す。


「……君のお好きなように…」

それっていいって事だよね?

私は今までの人生で一番いい笑顔を先生に向けた。
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