傷恋(キズコイ)
「ああ、誤解しないでくださいね。キスはお礼じゃないです。僕がしたいだけで」

生真面目に説明する先生が可笑しくて、笑う私を不満げに見る。

「何かおかしいですか?」

「う…ん。可笑しいかな…」

手を掴んだまま、椅子から立ち上がった先生が私を引き寄せた。

体勢を崩した私は頭から先生の胸に飛び込む。

「先生?」

仰ぎ見た私の唇に先生の唇が触れた。



「キスしたいと思うぐらいには君の事が好きみたいです」

すごく短くて、ホントに触れるだけのキスだったけど、先生が私を想ってしてくれたキスはとても温かくて優しかった。

「今よりもっと好きになってほしいな」

「それはまだわかりません」

う……。
先生に甘い言葉は無縁なんだろうか…。

「だから、君も研究対象に加える事にします」

「研究…ですか…」

真面目なんだか不真面目なんだか。

でもお堅い先生らしいと言えば先生らしい。
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