傷恋(キズコイ)
私は高3になって、受験のためにこの塾に通い始めた。

そこで彼に会った。

穏やかな語り口。
丁寧な解説。
成績が上がると一緒に笑ってくれた。

私がそんな彼に惹かれるのに時間はかからなかった。

ましてや、彼が私の希望している大学の講師であると知れば勉強にも熱が入ろうってものだ。

彼、矢野先生にとって私はただの生徒であるのはよくわかっている。

矢野先生は征也さんと同じく、私への対応が普通な珍しい人だった。

そういえば矢野先生と征也さん。
年も近そうだ。

あれぐらいの人からすれば、いくら容貌に自信があるとしても歯牙にもかからないんだろうか。

でも征也さんは、結衣と結婚してるよね?
だとすると、私も矢野先生の恋愛対象にだってなる得るんじゃない?

そんな事を考えていたら、待ち人が姿を現した。
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