先生のお望みのまま
「本当言うとさ、小学校の時友達とスケートで喧嘩したことあるんだ。その子の誕生会の日に大会で行かれなくって。小学生にとって自分の誕生会って一大イベントじゃない?大会は来年また出ればいいじゃないって言われて大喧嘩。」
ふふふっ。と寂しそうに杏華ちゃんが笑うけど、泣きそうな顔に見えるよ?
「それでも私は大会をとって、その子とは絶交。その時さ、女の子の親友ってスケートやってる限り無理だなって諦めたの。私にはスケートがあるんだから、仕方ないって。だから意地になってスケートばかりやってた。性格もキツクなったし、女子同士固まってバカみたいって反感持ってた。」
ふぅ〜っと大きく溜め息をついてから、こっちを向いた杏華ちゃんの目は潤んでキラキラしていてきれいだった。
「でもね、希実に会ってさ、スケートやってる私のことすごいって言って、丸ごとの私を認めてくれて。いつも遊びに行けなくてもその分学校でいっぱい話そう。って言ってくれて、初めて私って寂しかったんだって気がついた。意地になってただけだったって気がつけたんだ。それでまた、スケートが好きだって気持ちで練習できて、この2年楽しかった。希実のおかげだよ。」
向かい合って両手をギュって握ってくれた。
…あったかい。
気温はまだ暑いくらいだけど、杏華ちゃんの手は心地よかった。杏華ちゃんの目からホロリと涙がこぼれ落ちた。