ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
~プロローグ~
……ねえ櫂(かい)、覚えてる?
幼い頃、2人で読んだ
『いばら姫』――。
櫂はいつまでも、可愛いお姫様、
あたしはいつまでも、お姫様を助ける王子様で。
あたしと会えないまま、
100年も眠りにつくのは嫌だって泣いたよね?
――芹霞(せりか)ちゃあああん。
愛くるしい大きな瞳から、滝のように涙を流して…
小さな身体を大きな悲しみに打ち震わせて。
――僕を1人にしないでえっ!
そう…
あたしに抱きついて泣いたよね?
あたしの可愛い櫂。
泣いてばかりの甘えんぼの櫂。
あたしは櫂が大好きだよ。
どんなに櫂が弱虫で泣き虫で
女の子のように儚く頼りなげでも。
あたしだけを頼り切る…
天使のような微笑みが、あたしの原動力になるの。
櫂を守るために、あたしは強くなるから。