ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――芹霞ちゃあああん!!
自然とつぶった目の裏に…
拡がるのはまた黒ばかり。
ああ――
あたしは闇に包まれる。
もがいても、もがききれない闇の黒。
吸い込まれて、同化される懐かしい黒。
――芹霞ちゃあああん。
絶望的な闇に、息が出来なくなる。
そう、だから――。
くくく、
泣きたくなるくらいのこの闇を――。
くくくくく。
突如闇を割った笑い声に、目を開けた。
「笑い声……?」
理解できなかった状況が、次第に紐解かれていく。
櫂だ。
櫂が笑っている。
今までの熱さを消し去った、いつも通りのあたしの幼馴染。
「………」
ああ、そうか。
櫂は元から。
ダマサレタ。
「この……悪趣味っ!」
余裕だ。不敵だ。
泰然とした。揺ぎ無い構えを見せつける慣れた空気。
動揺していたのはあたしだけで。
櫂には唯――
気紛れの悪戯だったのだ。
その温度差に、やり場のない怒りを感じ…加えて羞恥心に顔が赤くなった。
櫂はそんなあたしに満足そうに笑いながら、身体を起こした。
「たまには……いいだろう?」
「はあ!?」
「いつもお前にやりこめられている可哀相な俺が、たまには反撃しても、さ」
そう、薄く笑った。