ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├王子様の溜息
櫂Side
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――あたしだって相手選ぶわよ。
本気で――
箍(タガ)が外れかけたんだ。
理性で武装した心に、ストンと投下された…やばい爆弾。
満たされぬ想いが心に膨れあがり、燻っていた熱に火が灯った。
理性で冷めぬ、俺の熱が…体に拡がって。
コワレル
そう思ったんだ。
――あたしだって相手選ぶわよ。
ああ――…
残酷なあの言葉。
どんな刃物よりも深く心を抉って、
「……っ」
息が詰まった。
心臓が悲鳴を上げたんだ。
正直――身体が震えていた。
それを気づかせまいと、必死だった。
芹霞は俺のものだ。
どんなに想っていても…所詮それは俺のエゴなのだと。
現実は甘くはないと、思い知らされたようで。
そう――
いつも不安で仕方がないからこそ、
芹霞の携帯から、見知らぬ男の存在を消去したのに。
代わりに、俺という存在を刻み込んだのに。
――櫂。あたし達は永遠なのよ
8年前と…
未(いま)だ何1つ変えられぬ自分。
未だ"男"として意識されぬ自分。
"永遠"の呪縛を解くことが出来なくて。
俺が欲しい"永遠"は違うのに。