ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




「え?」


玲の驚いた声。


「恐らくあいつはそれを交換条件に、元老院と直接取引をしたんだ。だから昨日の今日で御階堂本家の当主に座せ、新たな元老院にまでなれた。

……私怨で、あいつは紫堂を完全潰しにかかってくるぞ」


「はっ! いくら元老院の一員となったからって、そう簡単にいくわけないだろ。建前は財閥だけど、紫堂は過去力の全てを元老院に捧げてきた。唯一の特殊組織じゃないか。潰せるわけがない!」


玲は珍しく声を荒げた。


「……玲。"緋影"が絡んでいるかもしれん」


――何せ一筋縄じゃいかない奴らが絡んでいるからね。


「氷皇が警告してきた」


「……そうか。実は……僕も、桜から報告されたよ。緋影が絡んでいるかもしれないって」


「桜が? 桜は…篠山亜利栖のことを調べに行ったんじゃ…」


「その流れでだ。そして…櫂。

彼女は篠山の養女で……緋影の血筋の者かも知れない」


「なんだって?」


「彼女は生き別れた弟『ひかげみつる』を探していたらしい。

彼女がよく使っていたという学校の電算室、学校のPCにアクセスしてみたら、彼女のメールボックスにやりとりの名残があった。

ただ残念なことに、彼女の学校、サーバー負荷回避の関係で一定の期間過ぎると古いものから送受信メールが自動削除になっていくんだ。

それでぎりぎり残っていたのが、失踪直前受信の1通のみ」



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from:チェシャ猫 
件名:試験の件
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こんにちは。
この間はお疲れ様でした。

早速、試験結果ですが……。

さすがはアリス。試験は合格です。
残すは最終。それに合格すれば、
弟は戻ってこれる。
詳細は明日お会いした時に。

チェシャ猫
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「送り主のH・ N(ハンドルネーム)はチェシャ猫。素人ではないことは間違いないね、IPアドレスを追跡してみたら、僕の自慢のPC一台やられたよ」


玲は肩を竦めた。

「彼女に示唆していた誰かが居たというわけか。……アリスにチェシャ猫か」


不思議の国のアリスとは。
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