ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
そして続ける。
「黒の書の受け皿になるに相応しい奇跡の肉体。それを元老院が見逃すわけなく、だから過去、彼らは元老院の研究対象だった」
「だけどね、結果的には死ぬんだよ、時間がかかってもね。そしてその研究はあまりに人の道に逸れていた。それで結局、身内の反乱という形で強制終焉(ゲームオーバー)さ。
そして元老院の1人が証人という形で休戦同盟が結ばれ、平和なはずだった。だけど1ヶ月前、その元老院が殺されてしまった」
「つまりは休戦が解除された形になってきたわけだ。過去、生ける屍と呼ばれたモノが、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)であるとすれば、今の状況は不完全、まだ研究は完璧じゃない。
緋影が無関係ではないのなら、まだ緋影の影響は出ていないようだ。今のところは、な」
「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)……櫂も出くわしたの?」
「…… 偶然。道化師もな」
――ぎゃはは。血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に気をつけな。
「……そして櫂は、捨て台詞で去っていこうとした道化師に話を聞こうとして……」
「それで、アバラ外されたんだ」
思い出すだけでも忌々しい。
――ぎゃはははは。
初めから感じていた、俺に対する敵意。
それなのに"助けた"のは…
宣戦布告としか、俺には思えなくて。
「生ける屍……人間じゃないよね。ちゃんと死んでいるのに、何なの、あれ? 漂うのは薔薇の芳香。絶対ギャグだよね」
俺は訝しげに芹霞を見て言った。
「薔薇の芳香?俺が出くわした奴はそんな匂い、しなかったぞ?」
「え? 昨日も今日もしてたよ?」
芹霞は意外そうに首を傾げている。
薔薇の芳香…?
煌も言っていなかったはずだ。
どういうことだ?