ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……櫂のせいだからね」
芹霞が俺を涙目で睨みつけている。
「……どうしたのさ?」
玲が興味深げに芹霞に聞いた。
「あのね、あたしやだって言ったのに…櫂が出演する、今流行の携帯アプリ同人系恋愛ゲームの攻略キャラに、櫂が勝手に自分に設定しちゃったの。そしたら櫂を騙るキャラメールが届くようになったのよ。
……弥生から連絡あるかも知れないから電源切れないし。静音(マナー)モードにしておくかな」
俺をじっと見つめる鳶色の瞳。
無表情に見えるのは…笑いを堪えているのだろう。
肩が…揺れている気がする。
「………。
……なんだ、玲」
「ん? 何でもない。さあ、僕は夕飯でも作ろうかな。そうだ、今日はぶり大根も作ろうか。芹霞、一緒に作ろうよ。判らないことはその時に」
「本当!!? 教えて、教えて~。味付けなんだけどね…」
そして仲良く台所に消える2人。
俺の前には芹霞のピンク色の携帯だけが残る。
偽の俺の、1つ前のメールは真実…俺が出したメール。
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Title: 連絡
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休む。
病気じゃない。
煌を付けろ。
-END-
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ああ――
なんだろう、この敗北感。
俺の嫉妬の行動は――
余計な苛立ちを増やしてしまっただけらしい。
「………はぁっ…」
何だか無性に情けなくなってきて、思わず大きな溜息をついた。