ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
8年間の幼馴染より、
12年間の幼馴染の方が安心できるに決まっている。
同じ家に住んでいるとは言え…
こんなオレンジ頭のがさつな俺より、
完璧な櫂の方がいいなんて判りきっている。
芹霞に対する櫂の溺愛ぶりは俺だって判っている。
玲も桜も皆、櫂の気持には気づいている。
12年も判ってねえのはあの阿呆タレなだけで。
あそこまであからさまな特別扱いされていて、気づかないって何よ。
俺ですら判ったのに。
櫂に聞けばあっさり認めた。
――だけど、俺には言えない事情がある。
そう苦笑した櫂の…それ以上を拒むあの翳った顔は忘れられねえ。
櫂が言葉にしねえ理由は、結局今も俺には判らねえけれど
だから俺は、櫂を応援しようとしてたんだ。
――煌、これは俺の問題だ。下手に気を回すな。いつも通りで居てくれ。
櫂はそう笑っていたけれど、俺だって早く櫂に幸せになって貰いてえし。
相手があの芹霞なのは微妙だけれど。
俺が裏で芹霞に櫂のことを褒めれば褒めるほど、
――当然でしょう。櫂は凄いんだから。今更何?
まるで芹霞に真剣に受け取ってもらえず、空回りしていた感もあるけれど。
――本当にあんたは、昔から櫂大好きっ子だよねえ。
否定はしねえよ。
俺にとって櫂は憧れだし。
大好きだし。
そう、俺は――
櫂の気持を知って応援していたんだ。