ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




――煌。飼い主に噛み付くなよ。


緋狭姉の、その言葉が無性に怖くて、

俺、役目だからと櫂の家に逃げてたんだ。


――煌、今日芹霞を頼む。


俺喜んだんだ。

俺の傍に芹霞がいること。

2人きりで居れること。


家に2人で居るのとはまた違う…興奮を感じて。


――紫堂の犬が。


俺やばかったんだ。

芹霞に手を出す男を殺したくなったこと。


それは櫂に頼まれたからではなく、

この俺が――。


芹霞に触れさせたくなかったんだ。

他の男の手から。


「…… 何も考えるなッ! 違う!」



櫂は絶対的な存在だ。


その櫂が誰よりも大切にしている芹霞を、

一番に守る存在になりたいなんて。


櫂の立ち位置が無性に妬ましいなんて。



何馬鹿なこと、考えてる?



忘れてないだろう、俺。



今ある俺の立ち位置。

俺の存在理由。


俺の決意こそが、俺の辿る運命のはず。



――……02は……験段……だ。

 
8年前のあの時


――……前は…… だから……を……せ!


あの地獄から助けて貰ったのだから。


――見てみろ。寒い2月のいい月夜だ。そうだ、お前を如月煌と名付けよう。


紅皇(こうおう)。

あんたとの約束は忘れていない。


――煌、死ぬ気で櫂を守れ。


そこから…俺と櫂との付き合いは始まったんだ。

8年もの…俺の誇れる、幼馴染と言う関係に…俺…。
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