ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……う?」
櫂は、芹霞に心底惚れている。
芹霞の為なら、全てを犠牲にするだろう。
そして未だ恋心が見えない芹霞だって、いつまでも櫂の存在は絶大だ。
櫂の為なら、喜んで命を差し出すだろう。
2人の想いは、どう違うというんだ。
「…… う!」
じゃあ俺は?
俺という存在の大きさは?
俺は、全てにおいて櫂には敵わない。
敵うはずがない。
ずきっ。
胸に…何かが突き刺さったような衝撃。
何だ、これ……。
何だ、この痛み……。
苦しい……。
「返事くらいしろッ!
―――……このボケッ!!」
ドガッ!!
脳漿が鼻から飛び出るかと思うくらいの、激しい衝撃が俺の頭を襲った。
「痛えなッ、このドチビッ」
半分涙目で、桜を睨み付けた。
このとことん黒い女――
基(もとい)男だが、本当に俺に対しては遠慮がない。