ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



そして8年前――


玲には――

悪いことをしたと思ってる。



8年前の"あの時"。




俺が紫堂に戻る決断をせねば

俺の今のある立ち位置には…



間違いなく玲が居る。



俺にとっては本当に幸運と言うべき、ギリギリのタイミングで、今の立ち位置を掴むことが出来たんだ。



あの時――

既に次期当主は玲に決まっていたのだから。




俺と玲との差は見るからに明らかだった。



――父上、お願いします。僕を次期当主に。



泣いて土下座して、全てをかなぐり捨てて必死に懇願する俺に、親父は軽蔑の表情を浮かべて俺を殴った。


誰もが滑稽な俺を嘲笑していた。



それでも諦めぬ俺に、

親父は薄く笑いながら…



この場で玲と闘えと、壁に掛けられている2つの剣を、乱暴に放った。



闘い方も知らない俺は、闘い慣れた玲に、近づくことすら出来ない。


剣が重過ぎて、持ち上げることも出来ない。



だけど――

屈することが出来ない俺は、ただがむしゃらに挑んだ。



結果など…火を見るよりも明らかで。

それでも俺は、無我夢中だった。



――お待ち下さい、当主。



忘れもしない、あの瞬間。


俺を救ったのは紅皇だった。
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