ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~





――3ヶ月……いえ1ヶ月。櫂様に猶予を頂きたい。



紅皇は続けて言った。



――必ず、櫂様は玲様に打ち勝つでしょう。



それは魔女の呪いの言葉のように。



確信めいた口調の紅皇に、

親父さえも拒めなかった。



俺は――


俺の唯の我が儘で、

僅かな猶予を親父から貰い…

玲の未来を木っ端微塵に打ち砕いた。



俺の不甲斐なさに

結局玲は翻弄されただけで

期待だけさせられただけで


最終的には壊された。



――僕は心臓に欠陥があるから。



どちらにしても次期当主の資格などないと、玲は今も笑って言うけれど、あいつの闇は拡がっている。


敗者の意向など棄却される、完全実力主義の紫堂において、玲が自ら俺の支配下に下ることを願い出たのは、俺にとって予想外だった。

俺にとっては願ってもみなかったことで。


だから俺も言った。


――父上。俺には、玲の力が必要です。


そして己の特技を生かした諜報活動をすることになった。

もっと表舞台で目立てるだけの実力があるというのに。



玲は…俺の為に――

"影"の道に生きることを余儀なくされたんだ。

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