ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……?」
とても頭が重い気がする。
「櫂様、大丈夫ですか?」
桜が俺の顔を覗き込んできた。
「お顔色が悪いようですが…」
「……大丈夫だ」
風邪でも引いてしまったのか?
桜の一声で、冷房温度が上昇した気がする。
煌がエアコンを操作したのか。
ずきっ。
ずきっ。
何だか本格的に頭が痛くなってきて、俺は家に着くまで、目を瞑っていることにした。
「おい、櫂。本当に大丈夫かよ?」
マンションに着いたベンツから降りる際、煌が心配そうな顔をして、ふらりとよろめいた俺を支えた。
ずきっ。
ずきっ。
何だか、先刻より痛みが増した気がする。
何だろう。気分がまるで優れない。
「頭痛がするんだ」
脈打った痛みになってきて、少し動いただけでも吐き気がしてくる。
「熱はなさそうだな。
戻ったらまず玲に薬を……桜?」
煌が少しだけ後ろを振り返り、佇んでいた桜を呼んだ。
「煌、……感じませんか?」
ずきっ。
ずきっ。
「は?」
ずきっ。
ずきっ。
「何か……負の気が増大しているような」
ずきっ。
ずきっ。
「これは…"瘴気"……?」
「………。桜、まず櫂を、安全な場所で寝かせようぜ。辛そうだ」
益々頭が重くなってくる。
俺、一体どうしたんだ?