ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
櫂にも匂いはなかったらしいし、煌からもそんな報告はない。
あのイヌ並の脅威な嗅覚をもってしても、薔薇の花の匂いなど、感じ取れなかった…。
だとすれば。
恐らくあの香水は――
"男"には嗅ぎ取れない。
このゲームの対象は、間違いなく女だ。
そして男はゲームから除外されている。
男はゲームに必要ないのだろう。
この…潔くも思える男女差別に、故意的なものを感じ取るのは、疑り深い僕の性格故か。
だけど――
「調べて見る必要があるね」
「え?」
芹霞が驚いた顔をして僕を見た。
「ゲーム管理しているメインサーバー。
……弥生ちゃん、パソコンって家にある?」
突然の僕の問いに、弥生ちゃんは吃驚したような顔をして、
「お父さんのものなら」
と、隣の部屋から、少し前のモデルの…日本製の13.3型ワイド画面のノート型パソコンを持ってきた。
僕は電源コードをコンセントに差し、弥生ちゃんの勉強机の上にパソコンを開く。
電源ボタンを押すとWindowsの画面が立ち上がる。
そしてID・パスワードが訊かれた。
「あッ。私……知らない。お父さん…こういうのしっかり管理するタチだから…多分、パスワードとかも定期的に変えていると思う」
細い声で弥生ちゃんが言う。
「どうする、玲くん? これなら…パソコン出来ないね」
身を屈めながら画面を覗き込んでいた芹霞は、困ったような顔をして僕を見た。
だから僕は――