ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
待ち兼ねたように廊下から、首をおかしな方向に曲げた別のモノが噛みついてくる。
僕は右手を伸ばすと、それの首を掴んで…鋭い気を放った。
ばあああんっ!!!
「きゃあああッ」
反対側で芹霞の声。
芹霞の首筋に、別の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が噛みつこうとしていて。
僕は慌ててその長い髪を横に鷲掴んで、そのまま壁に打ち付け、また気を放った。
何体……消した?
後何体残っている?
どくっ…どくんっ。
その時――
心臓が嫌な動きをした。
やばい。
乱れた…動悸がしてくる。
動悸の延長上にあるのは、発作だ。
慣れ親しんだその不快な予兆に、僕は唇を噛んで――そしてふと疑念が湧いた。
今更に。
……僕、
こんなに体力なかったか?
過去の戦場に比べれば。
僕を扱いた紅皇の鍛錬に比べれば。
幾ら今、戦線から遠ざかって、最低限の自己鍛錬しかしていない体とはいえ、こんなにユルユルと体力を消耗続けるのはおかしくないだろうか。
そう――
何かおかしい。
それは、結論の如く思い至った。