ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


体が重すぎる。

体に…特に心臓に負担がかかりすぎる。


まるで、体力を根こそぎ抜き取られていくように。


だから、余計に大量を捌(さば)ける敏捷性がない。


これなら…警護団員レベルじゃないか。



そこまで腕は落ちていないつもりだった。

少なくとも、桜以上の速さはあったはずなのに。



オカシイ。



嫌な汗が流れる。



オカシイ。




早く、家に帰った方がいい。




僕の本能がそう告げる。


家の方が安全だ。


家には僕の作った何層もの結界が張り巡らされている。


守備と回復。

そして――攻撃。


絶対不可侵の領域。


僕の領域に入らねば。



それはまるで啓示のような警鐘。



「玲くんッ! 見てあれッ!!!」




壁を突き破った3体が――



「共食いッ!!??」



お互いを貪り合っていたんだ。



その時――




「玲くんッ!!?」



体が、心臓が…

更に鉛のように重たくなった。



息苦しい。

動悸が止まらない。




発作の前兆……だ。



僕は無理矢理意志の力で、心臓を宥(なだ)める。

勿論、気休め程度の時間稼ぎだけれど。



「芹霞、今の内に部屋から出るよ!?」

「判った!!!」


芹霞は平気らしい。


だとしたら――

急激の異変を感じたのは…



僕だけ。



一体これは――?



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