ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
台所は――
破壊され、その残骸で埋まっていた。
裏口には、すぐには辿りつけられない。
居間には嵌め殺しの大きな窓があるが、それを破って飛び出すしかないのか。
飛び出したその先は、安全だと言い切れるのか。
「玲くん、どうしよう!?」
尋ねるしか能がない、自分の非力さがつくづく厭になる。
玲くんは部屋を見渡し、そして弥生をソファに下ろすと、部屋の中央で目を瞑り、右手を挙げた。
「玲くんッ!?」
戦意喪失で諦めモードに入ってしまったのだろうか。
それとも発作でも起きるのだろうか。
「芹霞に見せたくはなかったけれど、そうは言ってられないしね。
"あれ"は今日に限って家に置いてきてしまったから、強硬的に、行くッッ!!!」
そんな呟きが聞こえたと同時。
バリバリッ。
突如、電気が放出するような、音が部屋一面に響いた。
「え!?」
テレビとか、奥の台所に見える冷蔵庫だとか、あらゆる電化製品が白に近い青色に発光しており、そこから伸びる稲妻のような電気が、長く伸びて、玲くんの右手に集まっていく。
呆然としているあたしの前で、玲くんは表情を崩さずして目を開き、その右手を床に打ち付けたんだ。
その時。
ドアのバリケードが壊され、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が部屋になだれ込んでくる。
同時に。
玲くんが打ち付けた床に青い色の光が走り、それはあたし達を覆うように上昇し、球状になったんだ。
何…何なのこれ!!!?