ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……あんた、医者?」
「……なわけねーだろ。
ま、さすがは紫堂の血を引く男。解呪方法持たず生身の身体だけで、よくお前やダチ抱えてこの中連戦して、この結界。
よくここまで超速でプログラムコードを書き換えられている。そこは感心だ」
「!?」
「へえ、知らないのか。電力奪いとるだけで、結界として持続出来るわけねえ。電力だっていつかは尽きる。尽きるコードを、尽きねえように、更に外部からの侵入を弾くように、追って書き換えてる。ま、俺も噂にしか聞いてなかったけどよ」
そして金の男は、ぎゃははははと笑う。
「メインサーバーに手を出したろ。余計なことしなければ、ここまで呪詛の反動が大きくなることもなかっただろうな、ぎゃはははは」
「ジュソって……」
「その名の通り呪いだよ、呪い!! そ、紫堂櫂へのとばっちり受けてるわけよ。その男も紫堂の血を引いているからな。更にそいつ自身の呪詛とが負荷されてるってわけ。
ま、命落とさないで居られるのはさすが紫堂の元次期当主だが、持病あんだろ? 生かさず殺さず……"あいつら"も容赦ねえよな、ぎゃはははは」
振り返ってみる玲くんは、金髪の男を睨み付けている。
が、それも弱々しい。もう言葉を出すのも辛そうだ。
「……"あいつら"って何?」
道化師に襲いかかる血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)。
「あいつらはあいつらだ。だけどあいつらを俺と一緒にするなよ。俺はあそこまで趣味は悪くねえ。ま、あれだ」
道化師は、平然と鉤爪を引く。
「敵の敵は味方、みたいな?」
「じゃあ……
あたしにとって敵?」
あたしは…この男をまだ推し量れない。
敵か…味方か。
仮に味方と言われても…
信じられる程の信頼感がまるでない。
何より、櫂を襲った男であるのなら。