ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├飼犬の涙
煌Side
*************
「桜……てめえ……」
――お願いよ、煌ッ!! 玲くんを助けてよッッッ!!!!
突如切れた芹霞の悲鳴。
俺は――
横から電話を切った桜を睥睨した。
桜は、携帯を持ったまま…
冷ややかな眼差しで俺を見ている。
全て飲み込みそうな、ブラックホールのような色を目に宿す、漆黒色の警護団長。
非情と名高い、『漆黒の鬼雷』。
「桜、早く芹霞に電話かけ直せッ!!」
俺は携帯というものの使い方を知らない。
使おうとすれば、火が出て暴発する。
ましてやこれは櫂の携帯だ。
電話をかけるのなら、桜の手を借りるしか術はねえ。
「早くッ!!」
「ねえ、煌……」
桜は、静かに口を開いた。
焦る俺とは…対照的に。
「私が切らずにいたら――
何て答えるつもりでしたの?」
冷静すぎるのが、不気味な程に。
「どんな状況であっても、例え玲様や芹霞さん達を見捨てても、今倒れられて眠られている櫂様と共に居ると…、
櫂様の護衛なのだから、それが正しい決断なのだと、そう…言い張るつもりでしたの…?」
――あたしを嫌いになったらなったでいいから。
「桜、お前と言い争ってる時間はねえんだ。
……いい。…直接行く。
俺が助けに行くッッ!!」
――あたしなんて放っておいていいから。
俺は言ってねえよ。
お前が嫌いなんて一言も言ってねえ。
お前を放っておくなんて言ってねえ。
絶対――
ありえねえ。
だから俺は――
「だったら……」
背後で桜の声がする。
「早く行けや、
――このボケッ!!!」
ドガッッ
背筋に、桜の蹴りを食らった。
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「桜……てめえ……」
――お願いよ、煌ッ!! 玲くんを助けてよッッッ!!!!
突如切れた芹霞の悲鳴。
俺は――
横から電話を切った桜を睥睨した。
桜は、携帯を持ったまま…
冷ややかな眼差しで俺を見ている。
全て飲み込みそうな、ブラックホールのような色を目に宿す、漆黒色の警護団長。
非情と名高い、『漆黒の鬼雷』。
「桜、早く芹霞に電話かけ直せッ!!」
俺は携帯というものの使い方を知らない。
使おうとすれば、火が出て暴発する。
ましてやこれは櫂の携帯だ。
電話をかけるのなら、桜の手を借りるしか術はねえ。
「早くッ!!」
「ねえ、煌……」
桜は、静かに口を開いた。
焦る俺とは…対照的に。
「私が切らずにいたら――
何て答えるつもりでしたの?」
冷静すぎるのが、不気味な程に。
「どんな状況であっても、例え玲様や芹霞さん達を見捨てても、今倒れられて眠られている櫂様と共に居ると…、
櫂様の護衛なのだから、それが正しい決断なのだと、そう…言い張るつもりでしたの…?」
――あたしを嫌いになったらなったでいいから。
「桜、お前と言い争ってる時間はねえんだ。
……いい。…直接行く。
俺が助けに行くッッ!!」
――あたしなんて放っておいていいから。
俺は言ってねえよ。
お前が嫌いなんて一言も言ってねえ。
お前を放っておくなんて言ってねえ。
絶対――
ありえねえ。
だから俺は――
「だったら……」
背後で桜の声がする。
「早く行けや、
――このボケッ!!!」
ドガッッ
背筋に、桜の蹴りを食らった。