ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――またか、お前達!!
喧嘩の程度が酷すぎると、怒り狂った緋狭姉に、2人、両頬を平手打ちされて家から放り出され、鍵をかけられた。
――うわあああん、お姉ちゃんごめんなさいッッ!!
――緋狭姉、悪かったから、開けてくれッッ!!
それで開けてくれたら、俺は今でも此処まで緋狭姉を恐れはしねえ。
緋狭姉はやるなら、徹底的だ。
――芹霞、こっち来いよ。くっついてれば温かいから。
――ぐすっ、ぐすっ…。
帰る処がない俺達は、真夜中公園のベンチで寄り添うようにして眠り込み、気付いたら冷たいタオルを頬に当てられ、家のベッドで寝かされていたこともあった。
芹霞は、今でも俺に素直に感情をぶつける。
俺にはそれが心地よい。
芹霞が何を考えているか判るから。
櫂には言わない本音を語る時、俺にその隠された心の一部を見せる時、すごく嬉しく思う。
例え櫂が芹霞の一番であろうと、
芹霞は俺とも共に居てくれるから。
だから――
――煌だって、大好きな幼馴染みだよ。
本当に嬉しかったんだ、あの時は。
『幼馴染み』という……
他人を排した特別な関係に、思った以上に俺は満足しているんだと、納得したつもりだったけれど。
蓋を開ければ、何て言うこともない。
俺が嬉しかったのは"大好き"という言葉。
多分俺は――
――あんた何で笑わないのよ!?
8年前に――…
初対面の芹霞に頭をぶん殴られた時から、
芹霞に惚れてたんだ。