ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
俺は何だか判らなくて。
何より、こんな芹霞の目が嫌で。
心臓が抉られそうだ。
全身を掻き毟りたくなる。
玲が呻いた。
思わず心配で伸ばした俺の手を、芹霞が思い切り払った。
「玲くんに触れないでッ!!!」
「!!!」
込み上げる情は嫉妬なのか。
こんな時頭に駆け巡るのは、芹霞からの慈愛を一身に受ける玲への、激しい羨望なのか。
俺は――拒まれた?
「あ!!?」
俺は芹霞の腕を掴んでいた。
思わずその手に力を込めた。
俺を見てくれ。
俺を拒まねえでくれ。
唯の幼馴染みでいいから、
いつものような笑顔を見せてくれ。
しかし芹霞は――
「あたしに触らないでッ!」
全身で俺の手を振り解いたんだ。
胸がきりきり痛む。
頭がぐるぐる回ってくる。
何かが腹の底から込み上げてくる。
何だよ、これは。