ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


俺にとって唯一の絆。


俺の不甲斐なさが、俺の愚鈍さが…

それさえも、失わせてしまったのか?



「最悪だ、俺」




もし櫂なら――




同じ幼馴染みの櫂なら。



違ったのだろうか。



櫂であれば――

こんな愚かな結果にならなかったのだろうか。



櫂であれば――


役目というしがらみに何の躊躇なく、真っ直ぐに芹霞を助けにいけただろうか。



櫂ならば。

櫂であれば。



ああ――…




「櫂に……なりてえ」






心底思う。




櫂になりたいと…。






「ぎゃはははは! 


捨てられた犬か」




下卑た笑いに、体は反応して顔を上げる。

だけど俺の頭は、思考を拒否していて。


道化師(ジョーカー)…。


忌み名は出たけれど、それに対する戦意は出てこなかった。

ぼんやりと…流れる映画を見ている心地だったんだ。



「泣いているのか、BR002」



俺には縁のない、意味不明な動詞を吐いて、その男は笑い続けた。


沈みかける太陽を背に、真上から俺を覗き込んでいる。

逆光で…表情が見えねえ。


見えねえけど…どうでもいい。

何かもう…どうでもいいや。


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