ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「そう思いたいなら、思っててもいいけどよ。だけど、愛護精神溢れる俺としちゃ、お前を放ってもおけねーわけよ。意味判るか、ぎゃはははは!」
判るわけねえだろ。
"愛護精神"やら"子犬"やら何だよ。
俺は、ワンコじゃねえんだ。
「芹霞は本心からお前との縁を切りたいわけじゃねえ。
起死回生のチャンスは、何れ巡ってくるさ」
…… 気色悪い。
「そうだな、ここからそう離れてない処に、女に人気の菓子店があるらしい。そこで芹霞の好きなモノでも買って帰れ。それで姫のご機嫌もマシになるさ」
何でこいつ、俺に構う?
「……慰めなんていらねえよ」
わけ判んねえ。
笑う男は、掴んだままの俺の手を払って、立ち上がる。
「今日のことは、前戯だと思え。
明後日……御子神祭では覚悟しろ」
急に変わる空気。
「……お前、何者だ?」
俺は反射的に目を細めた。
「オリジナル――
…っていえば判るか、BR002!
ぎゃははははは」
けたたましく笑いながら、男は地面を蹴ると――消えた。
「……オリジナル?」
馬鹿な俺には1つのことしか考えられない。
『BR002』
「嘘だろ……?」
出来ることなら――
永遠に捨て去りたい悪夢。
過去の悪夢は――
「まだ続いているのかよ」
一体何のために?
「今度は……何が目的だよ!?」
また俺は――
悪夢から逃れられない。