ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
第4日~虚空に乱れる薔薇~
├王子様の苦渋
櫂Side
***************
夢を見ていた。
幼い頃の俺と芹霞。
――芹霞ちゃあああん!!!
今でも変わらない、勝ち気な黒い瞳。
健康的な小麦色の肌にいつも傷を負い、肩で切り揃えた黒髪を風に靡かせ、爽やかな笑顔を見せるその姿。
――あたしの櫂に何をするッッ!!!
芹霞は、いつの時もどんなことからも俺を守り抜いた。
俺を傷つけるものは全力で攻撃し、
俺が大切にするものは全力で庇護した。
――あたしは櫂を守るから。
――あたしを信じていてね。
口先だけではなく、確かな行動で示した。
近所のガキ大将に虐められて泣く俺。
転んで血を見て泣く俺。
捜し物が見つからないと泣く俺。
風邪をひいて辛くて泣く俺。
哀しい物語に泣く俺。
芹霞が居ないと不安で泣き、
芹霞を見つけると感動で泣く俺。
とにかく"泣く"しか能がなかった俺に、芹霞は誰よりも早く駆けつけ、温かく抱きしめたんだ。
俺は決して1人ではないと、
俺が泣き止むまでずっと抱き留めてくれた。
俺にとって芹霞は、絶対的な存在で、決して裏切らない唯一無二の存在。
――あたしは櫂がだあい好き。
それは…これ以上ない程幸せな言葉だ。
最初は心がほんのり温かかった。
やがて温かさは、焦げ付くような熱さに変わり、その内痛みを伴う切なさに変わった。
そして切なさは…渇望に変わる。
俺が芹霞を想っているくらい、芹霞は俺を好きでいてくれているのだろうか。
俺が芹霞を必要だと思っているくらい、芹霞は俺を必要としてくれているだろうか。
俺から芹霞を取ったら何も残らない。
芹霞こそが俺の全てだと…
同じように、俺を思っていてくれているのだろうか。
俺と芹霞の感情は、寸分たりとも差違はないだろうか。
考え出したら不安が止まらない、"恋心"の芽生え。
***************
夢を見ていた。
幼い頃の俺と芹霞。
――芹霞ちゃあああん!!!
今でも変わらない、勝ち気な黒い瞳。
健康的な小麦色の肌にいつも傷を負い、肩で切り揃えた黒髪を風に靡かせ、爽やかな笑顔を見せるその姿。
――あたしの櫂に何をするッッ!!!
芹霞は、いつの時もどんなことからも俺を守り抜いた。
俺を傷つけるものは全力で攻撃し、
俺が大切にするものは全力で庇護した。
――あたしは櫂を守るから。
――あたしを信じていてね。
口先だけではなく、確かな行動で示した。
近所のガキ大将に虐められて泣く俺。
転んで血を見て泣く俺。
捜し物が見つからないと泣く俺。
風邪をひいて辛くて泣く俺。
哀しい物語に泣く俺。
芹霞が居ないと不安で泣き、
芹霞を見つけると感動で泣く俺。
とにかく"泣く"しか能がなかった俺に、芹霞は誰よりも早く駆けつけ、温かく抱きしめたんだ。
俺は決して1人ではないと、
俺が泣き止むまでずっと抱き留めてくれた。
俺にとって芹霞は、絶対的な存在で、決して裏切らない唯一無二の存在。
――あたしは櫂がだあい好き。
それは…これ以上ない程幸せな言葉だ。
最初は心がほんのり温かかった。
やがて温かさは、焦げ付くような熱さに変わり、その内痛みを伴う切なさに変わった。
そして切なさは…渇望に変わる。
俺が芹霞を想っているくらい、芹霞は俺を好きでいてくれているのだろうか。
俺が芹霞を必要だと思っているくらい、芹霞は俺を必要としてくれているだろうか。
俺から芹霞を取ったら何も残らない。
芹霞こそが俺の全てだと…
同じように、俺を思っていてくれているのだろうか。
俺と芹霞の感情は、寸分たりとも差違はないだろうか。
考え出したら不安が止まらない、"恋心"の芽生え。