ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「何だ、そんなに妹がいいのか。

でも手強いぞ?

……処女を慣らすには」



途端俺は固まり、

玲は口に含んだ煎茶を吐き出し、

桜はそれを正面に受け、

そして煌は更に紅潮した顔。


「おや?知らなかったか、芹霞は正真正銘の処……」


「何度も言うんじゃねえッ!!」


煌が叫んだ。


「ふん。何を純情ぶって。童貞でもあるまいに。独りよがりの快感求め、経験豊富な香水女を散々食い散らかす野犬が、今更慣れぬ処女に何を期待する?」


「~~ッ!!!」


「そこで他人顔で桜の顔拭いている玲。私はお前の女遍歴だって知ってるぞ?」


矛先は――

あえて表情を変えぬ玲。


「……若気の至りです」


それは他人事のように。


「随分と隠居じみたなあ、まさかその若さで、お前もう……」


「まだまだ現役で行けますッ!!」


――崩れた。


「ほう、イケるか。それは良かった。だがお前の心臓に、処女相手の持久戦は辛かろう? 持病が悪化する前に、一度抜いておけよ?」


玲の白い顔が煌と同じように赤く染まり、ふるふると震えたまま項垂れてしまった。


「桜……お前はまだ早いな。


――で、坊」


肉食獣のような目が向けられる。



今度は俺か。



「完璧主義のお前のことだ。まさか準備を怠ってなかろうな?」


――知っている。


「処女相手に暴発し、慌てふためき落ち込む坊も見物だとは思うが、愛あらば"技術(テク)"は必要ないと、処女を甘く見てれば泣くのは坊だ。手強い処女に蔑まれ、平気でいられる坊ではあるまい?」


――絶対、知っている。


だから俺はにっこり笑う。


「俺は手強い処女でも歓迎です。"最初"の形がどうであれ、"最後"に双方激しく求め合えるなら、むしろその結果を完璧にする為に、ひたすら研究し慣らし続けたい。完璧主義のささやかな楽しみです」



「……ぶッ!!!」



再び玲が、桜の顔に茶を噴出した。


「は、激しく……」


何を想像しているのか、煌は完全茹蛸状態でふらふらしている。


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