ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
そしてすっと笑みを消して俺を見る。
「危惧すべきは――芹霞だ。
無関係ではない"8年前"を鑑みることは、即ち、芹霞の過去に自ずと繋がる。
アオも感づいている。もう、潮時だったのかもしれん。
……坊、腹括れよ?」
そして緋狭さんは、煌を連れて居間から出て行った。
判っている。
彼女は忠告に来たんだ。
たとえ芹霞が奪われても。
俺が動いてはいけない。
動くべきではない。
やることは他にある。
今は煌が動くのが最善だと。
――紅皇として。
彼女は判っていた。
彼女が制さぬ限り、俺は皆を殴り倒しても、芹霞を探しに行っていた。
だから――
彼女は、ここに来たのだ。
全て判っているからこそ。
そして。
――坊、腹括れよ?
俺は静かに目を閉じた。