ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




……!?



ガサガサッ。



……!!!??



「ま、まさか……今そこで何か動いたの、あいつ!?

黒くてらてら光る、あたしの嫌いなあいつッッ!?」



バサバサッ。


「ぎゃあああ!!! 飛んだッ!!! やっぱりあいつだ、あたしの天敵~ッ!! 何とかして、とにかく、さくっと何とかしてよ!!!

早く、早く~~ッッッ!!!」


大騒ぎであたしは金髪男の背中に隠れ、その背中をべしべし叩いて促した。


「お前……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)にここまでびびってたか?」

「嫌い、嫌い、あの黒いの大嫌い~~」


あたしはこの世で一番、ゴキブリが嫌いだ。


昔、巨大なアーモンドと間違えて口にしたことが、思い切りトラウマ。

それ以来恐怖の対象だ。


地球が破滅する時、こいつが生きているなら、あたしは喜んで死んでやる。

こいつと共に生きる人生なら、積極的に捨ててやる。



「本当に変な女だよな……」



ばしっ。


金髪男は人差し指と親指……いわゆるデコピンの形で黒いアイツをやっつけた。



「うぎゃあっ、今度はあっち~~」

「何で俺がこんなこと……お前、立場考えれよッ!!」



ばしっ。



「ヴああああ、今度はそっちッ!!! 一体どれだけあいつらの侵略許してるのよ、あんたッッ!!!! もっと人間領域を確保しなさいよッッ!!!」

「うるせえッ!!!」



ばしっ。


「う゛ぎゃああああ!!」

「うるせえんだって!!!」


ばしっ。



「あそこあそこあそこッッ!!」

「だから、うるせえんだって!!!」



あたしの悲鳴と男の怒声…指を弾く音は、しばらく続いた。


< 254 / 974 >

この作品をシェア

pagetop