ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
……!?
ガサガサッ。
……!!!??
「ま、まさか……今そこで何か動いたの、あいつ!?
黒くてらてら光る、あたしの嫌いなあいつッッ!?」
バサバサッ。
「ぎゃあああ!!! 飛んだッ!!! やっぱりあいつだ、あたしの天敵~ッ!! 何とかして、とにかく、さくっと何とかしてよ!!!
早く、早く~~ッッッ!!!」
大騒ぎであたしは金髪男の背中に隠れ、その背中をべしべし叩いて促した。
「お前……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)にここまでびびってたか?」
「嫌い、嫌い、あの黒いの大嫌い~~」
あたしはこの世で一番、ゴキブリが嫌いだ。
昔、巨大なアーモンドと間違えて口にしたことが、思い切りトラウマ。
それ以来恐怖の対象だ。
地球が破滅する時、こいつが生きているなら、あたしは喜んで死んでやる。
こいつと共に生きる人生なら、積極的に捨ててやる。
「本当に変な女だよな……」
ばしっ。
金髪男は人差し指と親指……いわゆるデコピンの形で黒いアイツをやっつけた。
「うぎゃあっ、今度はあっち~~」
「何で俺がこんなこと……お前、立場考えれよッ!!」
ばしっ。
「ヴああああ、今度はそっちッ!!! 一体どれだけあいつらの侵略許してるのよ、あんたッッ!!!! もっと人間領域を確保しなさいよッッ!!!」
「うるせえッ!!!」
ばしっ。
「う゛ぎゃああああ!!」
「うるせえんだって!!!」
ばしっ。
「あそこあそこあそこッッ!!」
「だから、うるせえんだって!!!」
あたしの悲鳴と男の怒声…指を弾く音は、しばらく続いた。