ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「……!!」
金に走るは悔しさの光。
判っていてもあたしは見ないフリをする。
「そうよ? あたしはあんたじゃないもの。あんたの気持ちは判らないわ。あんただって判られたくないでしょ、人には踏み越えて貰いたくない領域があるものね」
それでも、
「でもねえ、ハナから何もしようとしないで"運命"ばっかり呪うのは、"運命"という永遠を、頑張って手にしようとしている人間にとっては凄く失礼よ」
無性に構ってしまいたくなる。
判ってる。
似ているんだ。
泣いてばかりで諦めていた昔の櫂と、
拒絶することで自分を保っていた昔の煌に。
出逢ったばかりの、あの2人に。
「それとも何? あんたを哀れんで一緒に泣いて、よしよしと頭でも撫でて貰いたかった? 同情して貰いたかった?
……違うでしょ、何とかしたいんでしょう?
情けなくても必死に足掻(あが)いてもがいて頑張れば、"運命"の形は変わるのよ」
突然、ぎゃはははははと笑い声が響いた。
「……俺をなめてねえか、
芹霞ちゃんよー」
ぞくり。
寒気が走るような低い声と共に、
突然あたしの視界は突如反転した。
「!!!???」
乱れた金髪の背景には…天井が映る。
強く掴まれ、動かないあたしの両腕。
「なあ、芹霞ちゃんよ。
初めて会った夜、何て言ったか覚えてるか?」
――俺の女にならね?
「無理矢理でもいいんだぜ?」
にやりと男は笑う。
「じ、冗談?」
「冗談に見えるか?」
至近で見下ろされる金色の瞳が妖しく揺れた。