ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「……!!」


金に走るは悔しさの光。

判っていてもあたしは見ないフリをする。


「そうよ? あたしはあんたじゃないもの。あんたの気持ちは判らないわ。あんただって判られたくないでしょ、人には踏み越えて貰いたくない領域があるものね」


それでも、


「でもねえ、ハナから何もしようとしないで"運命"ばっかり呪うのは、"運命"という永遠を、頑張って手にしようとしている人間にとっては凄く失礼よ」


無性に構ってしまいたくなる。


判ってる。

似ているんだ。


泣いてばかりで諦めていた昔の櫂と、

拒絶することで自分を保っていた昔の煌に。


出逢ったばかりの、あの2人に。



「それとも何? あんたを哀れんで一緒に泣いて、よしよしと頭でも撫でて貰いたかった? 同情して貰いたかった?

……違うでしょ、何とかしたいんでしょう?

情けなくても必死に足掻(あが)いてもがいて頑張れば、"運命"の形は変わるのよ」



突然、ぎゃはははははと笑い声が響いた。



「……俺をなめてねえか、


芹霞ちゃんよー」



ぞくり。


寒気が走るような低い声と共に、

突然あたしの視界は突如反転した。



「!!!???」

 

乱れた金髪の背景には…天井が映る。


強く掴まれ、動かないあたしの両腕。



「なあ、芹霞ちゃんよ。

初めて会った夜、何て言ったか覚えてるか?」



――俺の女にならね?




「無理矢理でもいいんだぜ?」




にやりと男は笑う。



「じ、冗談?」

「冗談に見えるか?」



至近で見下ろされる金色の瞳が妖しく揺れた。





< 257 / 974 >

この作品をシェア

pagetop