ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「余裕ぶった顔ってよー

――壊したくなる」



冷ややかな言葉尻。


自分の唇をぺろりと舌で舐めたその仕草は、震え立つ程、色気に満ちて。



「あたしもさー、余裕ぶった顔って無性に腹立つんだよね。だからさー」



抗戦を試みたあたしは、思い切り金髪男の股間を蹴り上げようとしたけれど。



「!!!?」



さすがは道化師だ。


「うう~~」


あたしの足は…虚しく空を切っただけ。



「残念だったなー芹霞ちゃん」


「ううう~~」




「気が済んだなら……


――食うぜ?」





変貌する――

獰猛な野獣の瞳。



荒々しくあたしの首筋に…唇が落ちてくる。



「!!?」



チクリ、とした肌の痛みが首筋に走る。

首筋だけではない、胸元にまで至る。


逃れたくても、抑えつけられて逃れられないあたしの体。



「離せ、離せッッッ!!!!」



気持ち悪い。


体に蠢く金色の髪が気持ち悪い。

荒い息がかかる肌が気持ち悪い。

体に這い回る手が気持ち悪い。



――せ……りか。



車で押し倒された時の

あのドキドキはまるでない。



――芹霞……。




暗い闇に沈んだようだ。




――芹霞ちゃあああん!!!




闇に聞こえるのは櫂の声。



泣かないで。

泣かないで。


あたしは大丈夫だから。


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