ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――芹霞ちゃあああん!
櫂、と呟いたはずの言葉は、
「……んッ」
何とも艶かしい響きに変わる。
それが嫌で涙が流れた。
「……ぎゃはははは。イイ声だ」
闇に沈もう。
闇に溶けよう。
涙で濡れた漆黒色に。
「苦しめ……紫堂」
闇、闇、闇。
闇だけを思い浮かべれば…
不思議と――
櫂の優しい瞳に包まれた気がして、
思わず笑みが零れた。
櫂……。
心だけは…ずっと一緒に…。