ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「僕さ、芹霞に"幼馴染"だって公言されたこと、ないんだよね。じゃあ何なんだろう。間違いなく、"男"としては思われていない」
「………」
「僕、あまり外出ないだろ? 櫂も芹霞には煌を付き添わせるしさ。だから今日、完全2人きりでゆっくり歩けるのかって思ったら、馬鹿みたいに浮かれてさ。
それで……このザマさッ!!!」
玲様の目から――
「僕なら護れると思っていたんだ。
僕だって絶対護れると。
だけど護れなかった……」
一筋の涙。
はらはら、はらはら。
頬を伝い落ちる悔いの涙は――
あまりに儚く、
あまりに美しく、
私は…息を飲んだ。
「櫂なら、こんな結果にさせないのにね。
櫂なら――…
櫂であれば…!!!」
玲様の手が小刻みに震えている。
だから私は――
「呪詛のせいです」
真剣に言ったんだ。