ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「違う。僕が自惚れすぎていたからだ」
「いいえ。玲様は今でも充分お強い。桜が断言するのだから間違いありません。原因は呪詛です」
本当にそう思う。
だから玲様。
そんなに自分を責めないで下さい。
後悔ならば
私だけで充分――。
もしも私が、品川で煌に喝を入れていなければ。
もしも私が、煌に自覚を促して混乱させねば。
煌は躊躇いなく芹霞さんを助けただろう。
電話から聞こえる一声だけで危険を察知して、駆け付けただろう。
そうしたら…。
道化師は現われることなく。
芹霞さんはいなくなることなく。
櫂様は暴れることなく。
玲様は自分を責めることなく。
煌の動きを制したのは――私。
私の私的な苛立ちが、
玲様が隠し通そうとしていた、秘めた心まで吐露させてしまった。
「玲様、私達には私達の出来ることをしましょう」
多分――
やるべきことは残っている。
「紅皇は意味なく現れない。彼女は櫂様や玲様に『呪詛』を強調しました。まずそれを何とかしましょう。桜は紫堂の血は引いてませんから、外を歩けます。
……玲様」
私は片膝をついて、玲様を見上げた。
「桜に何なりと、ご命令を」
後悔する結果には、絶対させない。
私が。