ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「違う。僕が自惚れすぎていたからだ」



「いいえ。玲様は今でも充分お強い。桜が断言するのだから間違いありません。原因は呪詛です」


本当にそう思う。



だから玲様。

そんなに自分を責めないで下さい。



後悔ならば

私だけで充分――。



もしも私が、品川で煌に喝を入れていなければ。

もしも私が、煌に自覚を促して混乱させねば。


煌は躊躇いなく芹霞さんを助けただろう。

電話から聞こえる一声だけで危険を察知して、駆け付けただろう。


そうしたら…。


道化師は現われることなく。

芹霞さんはいなくなることなく。

櫂様は暴れることなく。

玲様は自分を責めることなく。



煌の動きを制したのは――私。


私の私的な苛立ちが、

玲様が隠し通そうとしていた、秘めた心まで吐露させてしまった。



「玲様、私達には私達の出来ることをしましょう」



多分――

やるべきことは残っている。



「紅皇は意味なく現れない。彼女は櫂様や玲様に『呪詛』を強調しました。まずそれを何とかしましょう。桜は紫堂の血は引いてませんから、外を歩けます。

……玲様」


私は片膝をついて、玲様を見上げた。



「桜に何なりと、ご命令を」


後悔する結果には、絶対させない。


私が。

< 265 / 974 >

この作品をシェア

pagetop