ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├飼い犬の焦り
煌Side
***************
神崎家地下室、"鍛錬場"――。
「……!!?」
ぞわり、とした。
突如背筋に走った、得体の知らねえ悪寒。
これは此の場のひんやりとした冷たさのせいでも、目の前に居る緋狭姉が原因でもねえ。
虫の知らせ。
しかも…不吉な感じがする。
芹霞に…何かあったのか!!!?
「馬鹿犬、立ち上がるな」
緋狭姉が伏せていた目を薄くあけ、じろりと俺を一睨みするだけで…俺の動きは反射的に制される。
俺は渋々、また緋狭姉の前に座り込む。
「で、でもよ、なんか嫌な予感がするんだ」
「お前の予感はあてにならん」
芹霞とよく似た神秘的な目を向けられ、俺は思わずその目に魅入ってしまう。
「……盛るな、馬鹿犬」
「な!!?」
冗談じゃねえ。
誰が盛るかよ。
「私は、同じことを二度言うのは心底嫌いだ。それでも言わせたいのなら、お前も命の覚悟しておけ」
ぞくり。
先刻とは違う悪寒が背に走る。
――攫ったのが道化師なら、ひとまず妹は大丈夫だ。
「緋狭姉は心配にならねえのかよ!?」
「ならん」
一刀両断だ。
「だがよ、男と居るんだぜ?」
何かあったら堪らねえ。
櫂の心配性が移ってしまったのか。
よからぬ心配に、胃がきりきりしてくる。
それでも――
「私を信じよ」
鋭く見据えてくる眼差し。
「だがよー」
どうしても…すんなりとは受容出来ねえんだ。
不安ばかりが膨張しすぎて。
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神崎家地下室、"鍛錬場"――。
「……!!?」
ぞわり、とした。
突如背筋に走った、得体の知らねえ悪寒。
これは此の場のひんやりとした冷たさのせいでも、目の前に居る緋狭姉が原因でもねえ。
虫の知らせ。
しかも…不吉な感じがする。
芹霞に…何かあったのか!!!?
「馬鹿犬、立ち上がるな」
緋狭姉が伏せていた目を薄くあけ、じろりと俺を一睨みするだけで…俺の動きは反射的に制される。
俺は渋々、また緋狭姉の前に座り込む。
「で、でもよ、なんか嫌な予感がするんだ」
「お前の予感はあてにならん」
芹霞とよく似た神秘的な目を向けられ、俺は思わずその目に魅入ってしまう。
「……盛るな、馬鹿犬」
「な!!?」
冗談じゃねえ。
誰が盛るかよ。
「私は、同じことを二度言うのは心底嫌いだ。それでも言わせたいのなら、お前も命の覚悟しておけ」
ぞくり。
先刻とは違う悪寒が背に走る。
――攫ったのが道化師なら、ひとまず妹は大丈夫だ。
「緋狭姉は心配にならねえのかよ!?」
「ならん」
一刀両断だ。
「だがよ、男と居るんだぜ?」
何かあったら堪らねえ。
櫂の心配性が移ってしまったのか。
よからぬ心配に、胃がきりきりしてくる。
それでも――
「私を信じよ」
鋭く見据えてくる眼差し。
「だがよー」
どうしても…すんなりとは受容出来ねえんだ。
不安ばかりが膨張しすぎて。