ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
仕方がないからまた部屋に戻り、それから更に30分は経ったろうか。
ベッドに寝転がって、天井をぼうっと見ていたら、ドアが開く音がした。
「お前……何でここに居るんだ?」
陽斗だった。
まるで此処に居るのが不思議そうな顔をして。
だけど此処に居るのにほっとした顔をして。
「ボケたの?」
あたしは上体を起こして、
訝しげな顔を向ける。
「充分時間やったのに
……何で逃げないんだ?」
陽斗は信じられないことを言い出した。
「はあ!?」
冗談かとも思ったが、冗談にも思えない程、陽斗の顔は真剣で翳っていた。
「普通、逃げるだろうがよ」
陽斗はつかつかとあたしの元に近づいて、あたしの腕を掴んだ。
「逃がしたかったの?」
陽斗はそれには答えない。
ただじっと…金の瞳はあたしを見つめている。
「来いって言ったり、行けって言ったり…結局何なのよ。あたしがここに連れられた理由」
痺れを切らしたあたしは、真っ直ぐに陽斗を見て、本題を突き付けた。
「玲くんと弥生を助ける条件、陽斗はあたしを『迎えに行く』しか言わなかった。でも違うんでしょう?」
――条件? そんな価値、あたしにあるの?
――お前が闇の属性だからな。
「これから…あたしを、
何に使おうとしていたの?」
僅かに――金色の瞳が揺らいだ。