ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「紫堂玲には命張って、如月煌には助け求めるのに……紫堂櫂に限っては拒絶するのか?
お前は何にもわかっちゃいねえ」
「!?」
「違うな、ここまで攻撃的になるっていうことの意味、お前が『お前自身』をわかっちゃいねえ。
……ならよー」
そして荒々しく、あたしの腕を掴んだんだ。
「なら……
永遠気づかないでくれよ、芹霞ちゃん」
切なげに、苦しげに細められた金の瞳。
それはまるで懇願のように。
抑圧された"何か"が少しずつ放たれる。
「陽斗?」
ゆらゆら。
「男にとって『男』を意識されねえ程、屈辱的なもんはねえ。それはそれであいつには打撃になんだろうが、今言ってるのはあいつのことじゃねえ。
……俺のことだ」
ゆらゆらと何かが揺れている。
金色の瞳の奥。
……それは闇?
「人間なんてよ、男の力見せれば女は簡単に折れる。それが判っているくせに、余裕綽々で放置出来るのは…
俺を『男』としての欠陥品だと、嘲笑っているからじゃねえか」
違う。
これは悲哀。
これは憤怒。
これは憎悪。
これは憧憬。
これは嫉妬。
「なあ、何でお前『女』なんだよ。
なんで……」
そして切望。
感情の海。
感情の波がゆらゆら揺れている。
「何でまた『紫堂』だ?」