ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
ぎりぎりという歯軋りが聞こえて――
「お前があいつの『男』を必要としないで眠ったままでいたいのなら、別に俺が『男』の欠陥品でも構わねえだろ?」
焦がれるようにあたしを見る。
あたしは何の反応も出来なかった。
陽斗が何を求めているか判らない。
判らないから…涙が出たんだ。
そんなあたしを見て、陽斗は苦しそうに顔を歪めた。
掴まれた腕に、ぐっと力が込められる。
「――くそっ!!
……茶番は……
茶番の道化師(ピエロ)は、俺の方か。
……あの男の言う通り!!」
それは獣の咆吼のように。
掠れた声で言い捨てると、
陽斗は項垂れるように俯いた。
金色の髪が視界に落ちる。
眩しい金に、目がちかちかしてくる。
そして、陽斗は…ゆっくり顔をあげた。
ぎらぎらとした金色の瞳。
――食うぜ?
あの時のような、猛獣の瞳。
「お前が俺から逃げる気がないのなら、
このままずっと俺と――」
あたしは――
射竦められ、動けない。