ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
それはつまり――
「女を抱けない体だそうだ。
それも…後天的な要因で」
あいつが制裁者(アリス)というのなら。
「そんな体にしたのは……」
俺の問いに、玲は悲哀に満ちた顔で頷いた。
「……そうか」
俺は思わず目を瞑った。
――あいつはオリジナルって言った。
「道化師は……
……緋影の者か」
玲は頷いた。
「緋狭さんはこう言った。
"制裁者(アリス)の原型とはいえ、完全体ではない。
様々な"精査"にて明らかになった"弱点"を補い作られたのが煌だ。
そして煌には、道化師に必要がないと思われた物は省かれている。
無論、煌は何も知らないが"」
緋狭さんが言わんとすることが判ってきた。
道化師と煌。
――あいつはオリジナルって言った。
道化師は初対面の時より、煌に対しては殺気はなかった。
寧ろ、その相手をしているのが嬉しそうな顔をしていた。
煌も、敗戦続きで矜持を崩された割には、あいつ独特の殺気はなく。
無意識にでもそれは珍しいことで。
あいつらは…一対なのか。
しかし。
俺に対し、アバラを外すだけに止めたのは何故だ?
連夜、煌と芹霞の前に顔を出した理由は?
玲と芹霞の前にタイミングよく現れた理由は?
何故芹霞を連れた?
そもそも、何故突然現れた?
全てが必然的に繋がっているとしたら。
芹霞は餌だ。
その餌で釣ろうとしているのは――
「"あいつの真の狙いは、
紫堂を担う坊だ"」
俺か。
ああ、だから緋狭さんは俺を止めたのか。