ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
玲は、緋狭さんの口調のままで続けた。
「"だが坊には判っているだろう。紫堂の直系だからという私怨にしては、お粗末すぎる筋書きだ。そんな回りくどい方法でなくとも、直接坊を襲えばよい"」
その通りだ。
「"坊以外の…玲や煌や桜を怖がっているとしても、煌は2度も負かしているのだから、煌と坊の2人で居るのを見計らえばよい。
その時間も実際にあった"」
全くその通り。
ただ――
「"芹霞が居なくなるという、坊の精神的衝撃は計り知れない。ましてや己が身動きとれない時に。そこを狙った可能性も否めない"」
そう。俺は情けないくらい、芹霞を守れない。
例えば――
芹霞が道化師と会った夜は、
俺はアバラを外されていて。
……何故もっと重傷にしなかった?
例えば――
芹霞が池袋で氷皇と居た時は、俺はまだ学校で。
……何故池袋で氷皇と会う羽目になった?
例えば――
芹霞が玲と共に襲われた時は、俺は倒れていて。
……何故俺は倒れた?
「………」
血色の薔薇の痣の少女。
少女向け恋愛携帯ゲーム。
そして…呪詛。
「"不可抗力的な事象が、あまりにもタイミングよく起きすぎてはいないだろうか。
何故今回、こんなにも動きを制されるのか"」
玲は静かに笑った。
「"ここまで言えば、坊の暴走は落ち着いているはずだ"
……だ、そうだ。
さすが紅皇、だね」