ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「櫂。あのゲームは2部構成になっていて。前半部分の恋愛SLGは香水を飲ませことに誘導する為だけのダミーで、メインは後半の格闘部分なんだ」
「格闘?」
「そうさ。そして条件3つ目。その格闘モードで、実際襲ってくる血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)と闘い、勝たないといけない。
勝てばめでたく血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)、負ければ死ぬだけ、さ」
そう。
このゲームは永遠に終わらない。
ERRORのまま、永久ループし続ける。
「ちなみに。あの香水は、体内に取り入れることによって、人体組織を遺伝子レベルで改変する。細胞は再生活動を止め、急速度で死滅する。
その状態は生物学上での『死』の定義に値している。そこにあのゲーム……黒の書の凶言の呪力で無理矢理『生』を与えている」
それは薔薇の抗酸化作用のように。
「……芹霞の友人が血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)していないのは何故だ?」
彼女がまだ人型である理由。
「それは調べている最中だ。現段階で言えることは、彼女は外部に対する抗体数値が異常に高い。ありえない、くらいに」
もしかして――
僕の意識がない間、彼女に何かが起きたのかもしれない。
自然のものか、人為的なものかは判らないけれど。
尋ねたい芹霞は、近くに居ない。
僕が不甲斐ないばかりに、芹霞は……!!!
僕は思わず唇を噛んだ。
「うまくいけば、彼女から抗体の特効薬(ワクチン)がとれる、かもな」
櫂は静かに笑い、僕も頷いて。
「少しでも…血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化を防ぎたいよね」
何かの"意思"の犠牲になる少女達を、少しでも救えるのならば。
それを願わずにはいられない。