ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

「"あっち"の構成プログラムが、僕とが作るものと酷く似通っているんだ。

そしてコード自体に微かな意思を感じる。0と1を超えた向こう側の言語。この家にかけた結界と同じようなものだ」


「……」


「僕の結界は電脳世界の言語で作られている。僕が作ったメインコンピュータが認めた者なら、創造主たる僕じゃなくてもある程度の改変は可能だ。

そう。内部の者の操作には守備範囲外なんだ」


櫂は訝しげに僕を見ている。



「櫂。芹霞のゲームは――

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)から渡されていたんだよ」


「え?」


やはり櫂は気づかなかったらしい。


僕はテーブルにおいてある芹霞の携帯を指差した。


「彼女はゲーム開始にあたるパスワードを託されていた。それを実行した結果が、格闘部分から始まる13章。やりこんだ弥生ちゃんと同じ立位置だ」


「……」


「ありえないだろう、普通。パスワード管理されているものが、巷でフリーで配布されているゲームだったなんて。

確かに弥生ちゃんにも芹霞にも攻略キャラである偽櫂からメールは来てはいたけどね、芹霞のゲームには格闘に至る画面は表示されていない。

無論、弥生ちゃんのように偽櫂から香水を買って呑んで欲しいというメールは来ていない。細かい差異はまだあると思う。

つまり、似て非なるゲームだ、芹霞のは」


「芹霞のは一体なんだ?」


「テスト……β版プログラムだと思う。

つまりは血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化しない、身内のためだけのゲームの試験的なプログラム。

だとすれば、芹霞のゲームからアクセスすれば、メインサーバの防衛プログラムを突破できるかも知れない。そう思って、先刻部屋に戻って芹霞のゲームデータプログラム解析を進めている」


僕は、突き当たりの僕の部屋を促した。

< 319 / 974 >

この作品をシェア

pagetop