ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「"あっち"の構成プログラムが、僕とが作るものと酷く似通っているんだ。
そしてコード自体に微かな意思を感じる。0と1を超えた向こう側の言語。この家にかけた結界と同じようなものだ」
「……」
「僕の結界は電脳世界の言語で作られている。僕が作ったメインコンピュータが認めた者なら、創造主たる僕じゃなくてもある程度の改変は可能だ。
そう。内部の者の操作には守備範囲外なんだ」
櫂は訝しげに僕を見ている。
「櫂。芹霞のゲームは――
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)から渡されていたんだよ」
「え?」
やはり櫂は気づかなかったらしい。
僕はテーブルにおいてある芹霞の携帯を指差した。
「彼女はゲーム開始にあたるパスワードを託されていた。それを実行した結果が、格闘部分から始まる13章。やりこんだ弥生ちゃんと同じ立位置だ」
「……」
「ありえないだろう、普通。パスワード管理されているものが、巷でフリーで配布されているゲームだったなんて。
確かに弥生ちゃんにも芹霞にも攻略キャラである偽櫂からメールは来てはいたけどね、芹霞のゲームには格闘に至る画面は表示されていない。
無論、弥生ちゃんのように偽櫂から香水を買って呑んで欲しいというメールは来ていない。細かい差異はまだあると思う。
つまり、似て非なるゲームだ、芹霞のは」
「芹霞のは一体なんだ?」
「テスト……β版プログラムだと思う。
つまりは血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化しない、身内のためだけのゲームの試験的なプログラム。
だとすれば、芹霞のゲームからアクセスすれば、メインサーバの防衛プログラムを突破できるかも知れない。そう思って、先刻部屋に戻って芹霞のゲームデータプログラム解析を進めている」
僕は、突き当たりの僕の部屋を促した。