ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「それからね、櫂。僕は芹霞にゲームが渡ったのは偶然じゃないと思っている。櫂が初めて血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を目撃したのは、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に変貌してからだろう?」
僕の質問の意味が判らない櫂は、眉を顰めながら、ああと短く答えた。
「つまりは血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化してから、道化師が血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を狩っていたんだよね?」
「そうだが?」
「芹霞の場合はね、道化師は少女が人間の段階から狩っていたと聞いている。道化師が一度殺して血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化したと。
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化してから芹霞と会ったならば、芹霞にはあのゲームは渡らない。人間としての自我がないだろうからね。
だとすれば、芹霞が最初に道化師と会った、その血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は…意図的なものだ」
「何の為だ?」
「判らない。道化師の意図か、少女の意図か、その他の意図か。ただの紫堂の呼び水なのか、芹霞自体が必要なのか。氷皇が芹霞に直接接触したのなら、全ては必然だったといえるのかも知れないけどね」
櫂は髪をくしゃりと掻き揚げて考えている。
「何にせよ、僕らが家から出れないのは苦しい。呪詛を打ち破らない限り、いつどう倒れるか判らない。もしかすると以前と比にならない攻撃を加えられるかもしれない。
蠱毒の呪詛を纏う血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を動かしているのは、メインサーバだ。
だとすれば。
そのメインサーバからの命令を何とかすれば、呪詛は消えるだろう。
ここからは……僕の独壇場だ」
僕だって、やられたままでは終わらせない。
大切な者を奪われるきっかけを作ったものに反撃をする。
それは至極愉快だった。
だから僕は――
思わず微笑んだ。