ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├飼い犬の怒り
煌Side
***************
「離れろ、下衆野郎」
やっと――
「芹霞……」
――会えた。
不覚にも俺は涙声で。
片腕の中の芹霞の温もりを感じ、更に強く力を込めてしまう。
ああ…込み上げるこの情は――
触れることが出来た温もりに対する感動と、愛しいと思う心。
俺、やっぱこいつが好きだって…思わずにはいられねえよ。
「悪い、ここに来るまでに邪魔がはいっちまって。
大丈夫か? 何もされてねえか?」
そう。
神崎家からここに向かう途中、最近よく見かけるグラサン&黒服男に何度も取り囲まれた。
手加減してやろうとか、遊んでやろうとか、そんないつもの余裕はまったくなく…どうすれば秒単位で最短で片付けられるのかばかりを考えていた。
元々、桜のように多数相手の戦いを得意としない俺は、やはり桜のように同時に瞬間終了とはいかなかったけれど。
だけど少なくともいつもよりは、ほんの僅かな時間で相手を叩きのめしたと思う。
緋狭姉の"解除"のおかげで、身体は軽く、速度も出る。
久々に素肌に感じる外気は生温くて気持ち悪かった。
汗ばんだ肌に張り付くシャツを脱ぎ捨てたくなった。
身軽な体とは裏腹に、気持ちは急いて重かった。
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「離れろ、下衆野郎」
やっと――
「芹霞……」
――会えた。
不覚にも俺は涙声で。
片腕の中の芹霞の温もりを感じ、更に強く力を込めてしまう。
ああ…込み上げるこの情は――
触れることが出来た温もりに対する感動と、愛しいと思う心。
俺、やっぱこいつが好きだって…思わずにはいられねえよ。
「悪い、ここに来るまでに邪魔がはいっちまって。
大丈夫か? 何もされてねえか?」
そう。
神崎家からここに向かう途中、最近よく見かけるグラサン&黒服男に何度も取り囲まれた。
手加減してやろうとか、遊んでやろうとか、そんないつもの余裕はまったくなく…どうすれば秒単位で最短で片付けられるのかばかりを考えていた。
元々、桜のように多数相手の戦いを得意としない俺は、やはり桜のように同時に瞬間終了とはいかなかったけれど。
だけど少なくともいつもよりは、ほんの僅かな時間で相手を叩きのめしたと思う。
緋狭姉の"解除"のおかげで、身体は軽く、速度も出る。
久々に素肌に感じる外気は生温くて気持ち悪かった。
汗ばんだ肌に張り付くシャツを脱ぎ捨てたくなった。
身軽な体とは裏腹に、気持ちは急いて重かった。